スモールビジネス開業前に考えるべき「最低限の事業計画」ガイド
- 正俊 矢尾

- 4月30日
- 読了時間: 4分
更新日:5月1日
スモールビジネスであっても、開業前に「何をどうやって売るのか」を明確にしておくことが、成功・失敗を分ける重要な要素です。本ガイドでは、物販・サービス業を問わず事業の基本設計から、市場規模や成長性、資金計画と収支計画まで、最低限押さえるべきポイントを網羅的に整理します。

1. 何を誰に、どのように売るのか?
提供する商品またはサービスの定義
例:海外から仕入れた雑貨、オリジナルTシャツ、デジタル教材、英語レッスン、訪問整体サービスなど
販売モデルの明確化
物販:在庫を持ってECや実店舗で販売
サービス提供:時間やスキルを提供し報酬を得る(講師業、コンサル、代行業など)
販売のポイントと懸念点
物販であれば仕入れルートの確保、在庫管理、物流コストに注意
サービス業であれば単価設定、稼働限界、品質維持がポイント
2. 市場規模・需要の把握
ターゲット顧客は誰か?
性別・年齢・職業・地域・興味関心などペルソナを設定して、誰のどんな需要に応えるサービスなのか、想定される利用頻度は?といったことを明確にしましょう
市場規模と成長性の見積もり
公的統計(経産省・総務省)、民間調査(矢野経済研究所、Statistaなど)を活用して、ご自身が属するサービスの市場規模を明確にしましょう
競合との比較と自社の立ち位置
「市場は拡大傾向か?」「競合と差別化できるか?」をチェックし、これから盛り上がる市場なのか、安定して収益を得られる市場なのかといったことを整理しましょう
これらは希望的な観測で設定すると後で痛い目をみることもあります。なるべく客観的にみることが必要となりますし、今は良くてもどういうイベントが起きると危ないのか(自社の有力なメンバーが抜けてしまうといった内部的な要因から、法制度の変更や、国際政治の影響、災害の発生といった外部的な要因まで思い当たる要素を整理しておき、事前に対策を立てておく、その時はどうするといったアクションプランを明確にしておくことが重要です。)
3. 収支計画と資金計画の立て方
ビジネス開始前には、簡易的であっても「いくら使って、いくら入ってくるか」の見通しを立てることが極めて重要です。詳細は別のコラムで紹介しますが、概略を記載します。
収支計画
売上
何を、いくらで、月に何件売るかを仮定し、月商/年商を試算
競合の価格帯や顧客の支払意思額を踏まえ「いくらなら売れるか」を現実的に見積もる
仕入・原価
物販の場合:仕入価格、送料、保管料など含めた原価の把握
サービス業の場合:1件提供に要する人件費、交通費、消耗品費などを見積もる
販売管理費(経費)
変動費(売上に連動する費用)
例:販売手数料、梱包・発送コスト
固定費(売上に関係なく一定額がかかる費用)
家賃、水道光熱費、通信費、給料など
資金計画
初期費用(開業資金):設備投資、備品購入、保証金、初期仕入れ費用など
月次運転資金:最低3ヶ月〜6ヶ月分の固定費は確保しておくのが望ましい
資金調達方法:自己資金、親族借入、補助金、助成金、日本政策金融公庫や地方自治体の融資、VCやエンジェル投資家等からの出資、クラウドファンディングなど
仮に赤字になったり債務超過になっただけで倒産することはありませんが、資金がなくなりお金が払えなくなると基本的には倒産になります。
売上は順調にあがっていても、売掛金の回収が買掛金の支払いよりも長くないか等、資金繰りについても注意して確認しましょう。
4. 外注・ITツール活用の限界と運転資金への影響
スモールビジネスでは、外注やクラウドツールの活用によって人的リソースを抑えることができますが、全機能を外注で賄おうとすると固定費が大きくなり、運転資金を圧迫します。
初期は代表者自身が、営業・提供・経理など複数の役割を兼務する前提で設計すべきです
外注やツール導入は、事業の成長や繁忙に合わせて段階的に導入するのが現実的です
特に、販促や会計、法務など「間違うとリスクが大きい」業務を中心に専門家の支援を優先検討すると効果的です
この点もどんな機能について、どんな外部サービスがあるのか、どんなツールが使えるのかについて別のコラムで解説します。
5. まとめ:スモールでも「戦略設計」は不可欠
ビジネスが小規模であっても、「誰に、何を、どう売るのか」「それに必要な機能やコストは何か」を考えることは避けて通れません。
外注やITツールを適切に活用することで、人を雇わずとも効率的な運営が可能です。ただし、すべてを外注に頼れば手元資金をすぐに消耗します。自力で担える部分と、専門性が必要な部分のバランスを見極める「戦略的スモールスタート」が重要です。




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